工房の仕事の中で年々重要性が増しているシャフト交換。その一方、ネットで使用済みシャフトが流通するなど、危ない話も増えている。せめて事故が起きないように、安全な取り扱い法を広めていきたいものだ。
シャフト取り付けは組立の手順と同じなので、ここではカーボンシャフトの取り外しとホーゼル内のクリーニング等、新しいシャフトの取り付け直前までの作業をレポートする。なお、スチールシャフトの交換はこれらとはかなり様相が異なる。スチールシャフトは丈夫だしねじって取り外しても繊維がよじれるわけでもない。
ソケットが燃えないこと、ホーゼルが熱で変色しないことなどに注意すれば、かなり高熱を加えてねじりながら取り外しても問題ない。今回はあえてカーボンシャフトに限定して取り外しの工程を見る。
必要な工具
シャフト引き抜き器(カーボンシャフト用)、ヒートガン、電動ドリル、ドリルビット(8.5mm 9.0mm 9.5 mm)、万力、水に浸した布(カーボンクラウンのヘッド用)、金ヤスリ、布ヤスリ、溶剤、ティッシュペーパー、ブラシ、プライヤー
01、ソケットをずらしておく
メーカー純正品のソケットをキープするといった場合はゆっくり温め、慎重に上にずらす。ソケットは消耗品なのでプライヤーなどではさんで、上にずらせばいい。硬い場合はネットをかけるなどの手段で温める。ヒートガンなどで高熱をかけると燃えたり溶けたりするので注意。
02、ソケットをずらす工具
ソケットを温めてカッターで切り取る方法もあるが、シャフトを傷付ける危険も。基本的にソケットは接着されていないので、こんな工具ではさんでずらせばいい。
03、ソケットは3cmずらせばOK
この後ホーゼルを熱するので、燃えたり変形したりしないように3cmはホーゼルから離す。無理に上にずらしすぎるとシャフトに傷がつくこともある。
04、ソケットは温めると軟化する
セルロイド製もプラスチック製も温めると軟化する。ただセルロイド製は白煙を上げたり燃えたりしやすい。温める程度で軟化させてずらすのがいい。
05、引き抜き器に取り付ける
カーボンを壊さずに外すにはシャフト引き抜き器は必須工具。ホーゼル径に合わせてスペーサーをヘッド側に取り付け、本体を十分ヘッド側に近付けてからシャフトを固定。
06、バネを縮めてヘッドを固定
加熱前のセッティングの状態。ホーゼル径に合わせたアタッチメントやソケット位置に注目。バネは普段から締めすぎると利きにくくなる。普段は緩め、加熱前にここまで縮めてから使う。
07、加熱する
上下左右、3〜4箇所にそれぞれ30秒程度ずつ満遍なくヒートガンで加熱し、接着剤を溶かす。器具はクラブに直接触れさせない。カーボンクラウンのヘッドは濡れた布をクラウンに当てるなど注意して加熱。
08、バネを使ってヘッドを外す
バネ式の引き抜き器はバネの力を利用しつつ、ゆっくり外す。一遍に外すとヘッドや器具が傷付くこともある。じわじわ動かしてみて、接着剤が溶けていない間は無理に外さない。この加減は何度か経験して体得する。
09、シャフトにはできるだけ熱を加えない
カーボンシャフトは高熱が加わると劣化する。できるだけシャフトに熱を加えないように。バネを使うのもそのためだ。急ぎ過ぎも禁物だが、その範囲でなるべくテキパキと外す。
10、シャフト内部の接着剤を取り除く
内部に接着剤が詰まっていると、再利用するときホーゼル内の空気の逃げ道がなくなり奥まで刺さらなくなる。ヘッドを取り外したら中の接着剤をドリルで外す。刃が奥まで進むようなら穴が開いている。
11、シャフト貫通
電動ドリルで接着剤を除去。すっと奥まで通るようになれば、まず大丈夫。ドリルビットは4㎜程度の径で十分。ギリギリの太さにする必要はない。
12、シャフトに付いた接着剤も取り除く
シャフトに残った接着剤も取り除く。最初は金ヤスリなどで全体の接着剤を落とす。
13、布ヤスリで丁寧にクリーニング
接着剤が残っている部分は新たに接着するとき接着力が弱まる。金ヤスリで落とし残した接着剤は布ヤスリできれいに落とす。
14、溶剤でもシャフトをクリーニング
最後は溶剤できれいに。プロは溶かす力が強いアセトンを使うが、強力なので初心者はテストしつつ使うほうがいい。