ところが面白いことに現実にはそうはならないのである。正確な言い方をすれば、そのような公式通りの結果が出るクラブヘッドの重量帯は限られている。つまりゴルフにおけるクラブヘッドの「おいしい」重量は決まっているのである。以下は現在、拙ブログで翻訳を進めている「Search for the Perfect Swing(以下SPS)」というこれまた1969年に発行されたゴルフの科学的研究を行った書物で以下のような実験を行っている。
以下は43インチのシャフトに、様々な重量のヘッドを付けて飛距離の実験をした結果である(オンス、フィート表記にはグラム、メートル換算を加えた)。
この実験からわかることは、ヘッド重量が6オンス(170g)〜10オンス(283g)の間では、運動エネルギーの公式通りの結果となるのに対して、それ以下、あるいはそれ以上の重量帯では飛距離が落ちてしまうことを表している。またこの結果は、(常識的な)クラブシャフト長、ゴルファーのヘッドスピードに関わらず同じ結果をもたらすのである。
なぜそうなるのかの詳細を説明することは省略するが、重要なことは、1960年代の実験を待つまでもなく、ゴルフの長い歴史の中で経験則としてこの重量帯は把握されていたとみる方が自然であろうということである。
ブルックス・ケプカはおそらく私の三倍くらいの筋力があるだろうが、だからといって三倍重い道具を使うことは非効率なのである。不思議に思えるかもしれないが、思えば人間が使ってきた武器や道具の長さや大きさというものは、必ずしも体格や筋力の差を精密に反映しているわけではない。どんな道具にもきっと「ちょうどいい」大きさや重さというものが存在すると言うことであり、長年の歴史における改良の結果今日の道具があるのである。