リリース
構成・文/大庭 可南太 1974年生まれ。40歳を過ぎて突如ゴルフにハマり、米国の伝説のゴルフ理論書と言われる「The Golfing Machine」を日本で初めて翻訳。はてなブログ「ザ・ゴルフィングマシーンを勝手に解釈していくよ」の他、「PCM」でも「人はゴルフをする機械になるか」を連載中。

はてなブログ「ザ・ゴルフィングマシーンを勝手に解釈していくよ」

https://www.golfmechanism.com/aboutthisblog

第二話 アイアンとは何か(その2)

前回の記事では、アイアンに求められる第一の機能として「飛距離の打ち分け」が必要であるとし、現在のクラブの状況を見ればその飛距離の打ち分けは「クラブシャフトの長さやクラブヘッドの重量の組合せを変えてみる」ことによって発生しているのではないか」という先入観に対して、過去に行われた実験の結果をもとに考察を行った。 ここからわかったことは、「効率の良いクラブのスペックは一定の範囲に収まる」ということでしかなく、飛距離の打ち分けには別の要素が必要になるということであった。前回の記事ではヘッド重量をベースに考察を進めたが、今回はまず「クラブの長さ」が、実際のボールの挙動にどのような影響を与えているかを確認しておきたい。
「Search for the Perfect Swing」P210より

クラブの長さと飛距離差

以下は特に実験のデータを示すまでもなく実感が出来る事である。すなわち、クラブシャフトが長くなればなるほど
  • 重く感じる(よってヘッド重量を適切に調整する必要がある)
  • (ヘッド重量をシャフトの長さに対して適切にした場合)スイングのテンポの減少が抑えられ、スイング半径が大きくなる分、ヘッドスピードは増える
  • スイングプレーンがシャローになる→入射角が減り打ち出し角が上がる
  • 長さの分、空気抵抗は増える
  • (しなりなどの制御が難しくなるため)ミートは難しくなる
  • シャフト重量が増える(同じ素材の場合)
  • しなりが大きくなるので、柔らかく感じる(同じ素材の場合)
  • (横振りの傾向が強まるため)左右の曲がり幅が増える
  • (横振りの傾向が強まるため)ロフトによるバックスピンの量は減る
等の影響が考えられる。短くした場合はこの逆の効果が発生すると考えてよいだろう。 さて前回の記事で紹介したとおり、「Search for the Perfect Swing」では実際に同じヘッドを様々な長さのシャフトで打つ実験を行っている。
出典:COLLINS ILLUSTRATED ENCYCLOPEDIA of GOLF
結論から言えばこれらのクラブの間では飛距離差が発生している。ヘッドが同じものであればシャフトの長さによってバランスが変化するため、つまり長いシャフトではバランスが増え、短いクラブほど軽く感じるため、短いクラブではスイングテンポを速くすることが可能になる。結果としてシャフトが長くなることによるヘッドスピードの増加を相殺するので、投入される運動エネルギーには大差がない(シャフト重量と空気抵抗の増加分が影響はする)。しかし適切なミートが可能であった47インチから37インチまでのクラブの間で、飛距離差が発生したのは、短いクラブでは適切な打ち出し角が作れなかったためであると結論づけている。 ここで上記のクラブのヘッドを、ロフトはそのままで重量をフローさせたならばどうなるのか。おそらく飛距離の結果は変わらないはずである。スイングのテンポが一定になるだけで、運動量そのものは変化しないからである。よって、シャフトの長さのフローはあるが同じロフトのヘッドを付けた「シングルロフトアイアン」を作り、打ち出し角のみで飛距離差を付けることもおそらく可能なのだ。実はゴルフの歴史の初期、ウッド(文字通り木製)のヘッドしか存在しない時代は上記のような手法で飛距離差を作っていたのではないかと私は想像するのである。なぜならば木製のヘッドではロフト角を寝かせるほどヘッドの強度が問題になるからである。おそらくは短いほどライナー性の出球になったと思われるが。 とりあえずここまでの結論は、「シャフトの長さによる、打ち出し角の変化で飛距離差を作ることは可能である」ということである。
https://www.linkedgolfers.com/content/heritage-and-history/fifteenth-clubs/

アイアンに求められるもの(本題)

さてここまでの議論で、やはり賢明な読者諸氏は既にあることにお気づきのはずなのである。すなわち「これってゴルフクラブ全般の話でアイアンに限った話じゃないよね」ということである。そうなのである。 ふたたびネットでゴルフクラブの歴史を調べると、おそらくクラブは木製のウッドクラブが最初に作られ、アイアンはその後に発明されたようである。 木製の方が入手性、加工のしやすさの点で勝っていたと思われるが、何らかの事情で「鉄」すなわちアイアンを加工したクラブが必要になったのである。
https://whosyourcaddie.net/golf/?page_id=151
上記の写真のアイアンがいつ頃の年代のものかはよくわからないが、おそらくウッドでは不都合な状況を打開するためにアイアンは発明されたのではないだろうか。例えばヘッドを入れる事が困難なほど深いラフ、バンカーやぬかるみで土や砂の影響をなるべく少なくしてボールだけを掻き出すとか、思い切りハンマーのように打ち込んでボールを高く上げるとか(もはや目的が形状から想像出来ないものもあるのだが)。由来が同じかどうかは不勉強でわからないが「ウェッジ(Wedge)」というのはクサビという意味である。右から四つ目のクラブなどまさに地面とボールの間に打ち込むクサビの様ではないだろうか。 このように特殊な目的からスタートしたとしても、木製のクラブに比べて耐久性もあったはずなので、様々な形で発展しながら現在のアイアンに近づいたと考えられる。 しかしヒッコリーなどの木製のシャフトに鉄製のヘッドを付ける場合、当時の接着の方法ではある程度接着面を大きく取らないと、フルショットでは重いヘッドが抜けて飛んでいくという危険な事故も発生したはずである。そこから充分なネックの長さを確保すると、今度は木製クラブに比べて鉄製クラブのヘッドは重心位置が高くなってしまうという事態が発生したのではないか。 それが転じてボールにバックスピンをかけて、高さや飛距離を調節出来ると気づいた者がいたのではないかというのが私の推論(そればっかりで恐縮だが)である。

(続く)

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