前回の記事では、アイアンに求められる第一の機能として「飛距離の打ち分け」が必要であるとし、現在のクラブの状況を見ればその飛距離の打ち分けは「クラブシャフトの長さやクラブヘッドの重量の組合せを変えてみる」ことによって発生しているのではないか」という先入観に対して、過去に行われた実験の結果をもとに考察を行った。
ここからわかったことは、「効率の良いクラブのスペックは一定の範囲に収まる」ということでしかなく、飛距離の打ち分けには別の要素が必要になるということであった。前回の記事ではヘッド重量をベースに考察を進めたが、今回はまず「クラブの長さ」が、実際のボールの挙動にどのような影響を与えているかを確認しておきたい。
「Search for the Perfect Swing」P210より
等の影響が考えられる。短くした場合はこの逆の効果が発生すると考えてよいだろう。
さて前回の記事で紹介したとおり、「Search for the Perfect Swing」では実際に同じヘッドを様々な長さのシャフトで打つ実験を行っている。
出典:COLLINS ILLUSTRATED ENCYCLOPEDIA of GOLF
結論から言えばこれらのクラブの間では飛距離差が発生している。ヘッドが同じものであればシャフトの長さによってバランスが変化するため、つまり長いシャフトではバランスが増え、短いクラブほど軽く感じるため、短いクラブではスイングテンポを速くすることが可能になる。結果としてシャフトが長くなることによるヘッドスピードの増加を相殺するので、投入される運動エネルギーには大差がない(シャフト重量と空気抵抗の増加分が影響はする)。しかし適切なミートが可能であった47インチから37インチまでのクラブの間で、飛距離差が発生したのは、短いクラブでは適切な打ち出し角が作れなかったためであると結論づけている。
ここで上記のクラブのヘッドを、ロフトはそのままで重量をフローさせたならばどうなるのか。おそらく飛距離の結果は変わらないはずである。スイングのテンポが一定になるだけで、運動量そのものは変化しないからである。よって、シャフトの長さのフローはあるが同じロフトのヘッドを付けた「シングルロフトアイアン」を作り、打ち出し角のみで飛距離差を付けることもおそらく可能なのだ。実はゴルフの歴史の初期、ウッド(文字通り木製)のヘッドしか存在しない時代は上記のような手法で飛距離差を作っていたのではないかと私は想像するのである。なぜならば木製のヘッドではロフト角を寝かせるほどヘッドの強度が問題になるからである。おそらくは短いほどライナー性の出球になったと思われるが。
とりあえずここまでの結論は、「シャフトの長さによる、打ち出し角の変化で飛距離差を作ることは可能である」ということである。
https://www.linkedgolfers.com/content/heritage-and-history/fifteenth-clubs/