リリース
構成・文/大庭 可南太 1974年生まれ。40歳を過ぎて突如ゴルフにハマり、米国の伝説のゴルフ理論書と言われる「The Golfing Machine」を日本で初めて翻訳。はてなブログ「ザ・ゴルフィングマシーンを勝手に解釈していくよ」の他、「PCM」でも「人はゴルフをする機械になるか」を連載中。

はてなブログ「ザ・ゴルフィングマシーンを勝手に解釈していくよ」

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アイアンとは何か(最終回)

うっかり記事の更新が一ヶ月以上も空いてしまった。決して内容が行き詰まったのではない。7月末から仕事場のクーラーが故障して最近になって新しいクーラーが設置されるまで、ちょっと作業が不可能だっただけなのだ。今回わかったことは、「室温が40°くらいになると文章って書けなくなるんだね」ということであるが本題とは全く関係ない。 本企画は「シングルレングスアイアンはアリなのか」を探求するものであるが、それを判断するためにはそもそも「アイアンとは何なのか」を定義する必要があり、そのためゴルフクラブの歴史なども含めて考察を行ってきたのであるが、なんとか今回でまとめきりたい。 久々の更新なので、これまでの議論をおさらいしてみたい。
  • そもそもゴルフはなんでこんなにたくさんの種類の道具が必要なのか。
  • アイアンの長さを統一しようという発想は昔からあったが、ほぼ失敗した。
  • ゴルフクラブは度重なる実験の結果、現実的には長さ35〜47インチ、ヘッド重量170g〜285gの範囲に収斂した。
  • クラブは長いほどボールの打ち出し角度が高くなる。
  • ウッド(木製)で対応出来ない状況のためにアイアン(鉄)が開発され、その強度と設計自由度は、ロフトのフローとバックスピンをうみだした。
とまぁ、こんな感じである。では結局アイアンに求められるものとは何なのか。

アイアンに求められるもの(まとめ)

1. 飛距離の打ち分け

ゴルフというゲームの特性上、これは必須である。同じようなスイングでフルショットを行っても飛距離に差が出る構造になっていることで、プレイヤーはコースを果敢に攻略する事が可能となる。この場合、ヘッドのロフト、クラブの長さの両方でこの飛距離差を作ることが可能であるが、通常のセットではこの両方を使用している。

2. 狙った場所に止められること

これには、バックスピンによってボールのランを減らすこと、またはボールの高さによってランを抑えることの二つの方法がある。 これまでいろいろ考えてはきたのだが、機能としてはこの二つなのである。しかしこれを達成するために必要な事がいくつかある。

a)クラブの重量のフロー

長さがフローしているにもかかわらず、振り心地をそろえるには、クラブの重量もフローさせる必要がある。一般に0.5インチ=7グラムと言われている。つまりアイアンの番手ごとに7gの重量差が発生することになっている。

b)操作性とフィードバック

これはボールの性能にも影響されることだが、バーディを狙ってグリーンをめがけて繊細なショットを行う際、その弾道、着弾からのランがイメージ出来る事が重要である。例えばキャリー150yのショットを試みて、145yの着弾だったとする。それは当たりが薄かったのか、風の影響なのか、その日のスイングなのか、はたまたボールについていた泥のせいなのか、それらを見極めながらそれ以降の攻略を行っていかねばならない。実は「寛容性がある」とはこうした情報が少なくなることと同義である。ウッドクラブのバルジやロールは、ショットの内容に関わらず、結果を均一なものに補正しようとする試みである。 もしも松山英樹プロにホールで一回代打を頼めるならば、私は間違いなく第二打をお願いする。私がドライバーを打って多少曲げてラフに入れたとしても、残り180yくらいなら松山のアイアンは確実にワンピンくらいには寄るだろう。そうなれば悪くてもボギーはない。つまりアイアンに求められる真の役割とは、そのホールのスコアを左右する「雌雄を決する武器」としての役割であり、かなりセンシティブな道具にならざるを得ないことになる。そうなれば、もう一つ必要になってくることがある。

c)カッコイイこと!

今後ゴルフ人口の高齢化に伴って、アイアンでバーディを狙いに行くアスリート派と、ユーティリティや飛び系を使用して距離を稼いで寄せワンを狙いにいくゴルファーの乖離はますます進むだろう。つまりアイアンを持つこと自体が(その人にとっては)ステータスになり得る。そうなればデザインも、マッスルバック的か機械的かはわからないが、とにかくマッチョなデザインに意向すると私は見ている。当然コースで恥をかくことのないよう練習は必須だが、その意欲をかき立てるものでなければならない。

結局アイアンの長さがフローしているのはなんで?

現在の一般的なアイアンセットは、ロフトとクラブの長さという二つの要素を併用して飛距離を作っており、その結果クラブの重量もフローさせている。しかしこれはおそらく「結果的にそうなった」のではないか。歴史の中で遅れて登場したアイアンでは、ロフトを付ければ球が上がることがわかり、それならばシャフトを短くしてタテ振りにした方が方向性のブレが少ないことに気づいた。そして振り心地をそろえるために短いクラブはヘッドを重くしたということではないか。つまりクラブは短い方が操作性が良いと感じているということでもある。ならば短いままの同じ長さで、アイアンに求められる飛距離差やスピンが達成できるセットが最強と考えた者がいたのも当然である。 しかし第二話で述べたとおり、最近までこの試みは失敗しており、それこそが現在の「長さと重量がフローする」セットになっている原因だと思うのである。なぜ失敗したのかは次回で。

(続く)

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